一年通して温暖で穏やかな気候と自然が競走馬の心身のリラックスと強化に繋がる。鹿児島県志布志湾に面したこの地で馬は強くなる。
馬を熟知しその馬に適したトレーニングと休養を行い、かつてはトウカイテイオーの奇跡の復活や今年の九州優駿覇者のイカ二カンなど長年に渡りこの地から活躍馬を送り続ける山下牧場。
今回は代表取締役の篠原さんにお話を伺いました。
(取材・構成=藤田 健斗)
以下、インタビュー
ー海岸沿いで温暖な気候で素敵な場所ですよね
そうですね。競走馬の育成や休養において非常に適した環境だと思います。
特に海岸での調教をメインにしているのですが、その海岸に向かうまでの松林もアップダウンがあり、馬の足腰や心肺機能の強化に加えこの自然環境が馬のリフレッシュにも繋がります。
今まで牧場に取材に来られた方も海岸まで徒歩でついって行ってもいいですかと行った要望をいただいた際にいいですよとお答えするのですが、海岸に来るまでに皆さん息を切らしていますね。
それくらいアップダウンがある道を、運動の前後に自然と行えるのもすごく良いですよ。
ー砂浜での調教の効果などについて
砂浜は路盤がなく海から離れるほど砂は深くなりますし、波打ち際の方の砂は浅くなることなどから、馬の足の状態などに合わせて調教を行えるのも浜辺での調教ならではですね。
蹄や脚に不安のある馬にとって深い砂浜は衝撃を緩和してくれる事からも、リハビリなどにも適していますね。
実際に蹄の悪い馬などでも砂の深いところに行けばあまり気にする素振りも見せなかったりするので、馬の一曲一投足に配慮しながらメニューなどを組んでいます。
また、パワーの強化やフォームの安定にも繋がりますね。
反対に腱などを痛めている馬は砂が硬い所で負荷をかけない様に運動させるなど多種多様に環境を活用しています。
ー運動後すぐに海中で歩行させられるのも良いですよね
海中での歩行はアイシング効果や意図的に脚を上げなくてならないためフォームの矯正等にも繋がるんですよ。
また、海水には殺菌効果等もあるためフレグモーネ等を防ぐことにも繋がりますね。
蟻洞や裂蹄の馬の療養や疲労を抜くためにも、この直ぐに海に入れてあげられるのは大きいですね。
ー預託馬は主にどんな馬が多いですか
1歳の育成馬は勿論、蹄の怪我や不安、またエビの馬等も預からせていただいていますね。
また、中央から佐賀に移籍してくる馬の放牧や育成なども手掛けておりますが、各馬の状態に合わせてしっかりとメニューを組むこと、そして馬にストレスがない環境で成長を促して競馬場に戻せるように心がけていますよ。
ー最近は九州産馬の活躍も目立っていますが
現在は九州産馬限定のレースなどもあるため、2歳の早いシーズンに使うための育成は心がけていますね。
そのためにも九州の温かい環境で早くから動くようにしています。年中通して温暖なためそれが実現できています。
今後も地の利をいかした育成や調教を行っていきたいですね。
ー今後の目標については
やはりJRAの競走での活躍馬を増やしていくことですね。
今は九州産馬限定のレースなどもありますが、将来的には限定戦だけでなく大きなレースにも当たり前のように九州産馬が出てくるような状況にしていきたいです。
そのためにも九州全体で盛り上げていくことが必要ですよね。
ただ、何よりもこの仕事を行っている中で関わった馬の活躍は大小に限らず嬉しいもので元気で長く活躍できる馬を輩出し従業員みんなで喜びを分かち合っていきたいですね。
ー今年の注目2歳馬は
キスウマイ(松永幹夫厩舎)ですかね。
中央デビューの馬で生産はヨカヨカなども輩出した本田牧場さんになります。
無事に調教も進んでおり早期デビューもできそうです。
ー未来のホースマンに向けて
経験問わず、情熱のある方は歓迎ですね。
勿論大変な面などもありますが、この世界でしか得られない経験や感動がありますので是非共に分かちあっていきたいですね。
何よりも馬を走らせるのは人ですから次のホースマンが育てることが馬の活躍に繋がると思いますね。
ー本取材を経て
前回の本田牧場さんと山下牧場さんの取材を経て共通して感じる部分は馬は人が走らせているという事である。
馬への情熱、そして人との縁という言葉からも素晴らしい環境があってこそ、奇跡と呼ばれるトウカイテイオーの復活や長年継続して活躍馬を輩出していることに繋がっているように感じました。
なので奇跡と言われるトウカイテイオーの復活も人の手によって引き寄せられた必然なのかもしれない。
いつか九州産馬が中央競馬界で躍進する日を信じて競馬の歩き方でも応援させていただきます。
山下牧場
所在地
〒899−7306
鹿児島県曽於郡大崎町永吉9327−231
*参考
関連リンク
本田牧場さん取材記事
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