前回の第一弾の記事では競馬ファンとの交流の重要性や好調の要因の一つの繁殖牝馬の選定などについての特集となりましたが、
第二弾の今回についても引き続き好調の要因と谷川さんのホースマンとしての思い出などについてお伺いした内容を執筆しております。
ぜひ、ご覧ください!
(取材・構成=藤田 健斗)
下記インタビュー内容
ーその他の好調の要因は
放牧ですかね。近年、放牧に重点をおいている牧場も多いですがうちの牧場もですね。
放牧地はこれでも狭いと思っていますが、大分運動量は担保できているかなと思いますよ。
特に当歳のうちから夜間放牧をやっているかやっていないかですごく差がつきますね。
1歳に関しては、うちでは朝5時に馬を一度厩舎に入れて11時に再度離していますよ。
うちの牧場には育成施設があり、他の牧場の馬なども預かりますがきっちりと放牧していた馬と混ぜるとその時点での体力が全然違いますね。
冬季夜間放牧は近年結果の出ている牧場の多くが行っています。うちも今では当たり前に行っていますが、最初は躊躇いや不安もありながら始めました。
当初の私の予想としては放牧地の入り口に集まって然程運動していないんじゃないかと思っていたけどそんな事ありませんでしたね。
GPSをつけて距離計測を行うと冬場でも13キロぐらい動いていましたからね。夏場だと20キロぐらいだけど冬場でもこんなに動くんだなと。これはやった方がいいなと感じましたね。
ただ、雪が少ないと滑ってしまうので怖いんですよね。
爪も減ったり、割れてしまって可哀想になるんですよ。そんな事もありますけど、それでも夜間放牧は大事ですよね。
幼少期にきっちりと動かしてあげる事で精神的にも肉体的にも成長しますから。あとの体調なんかは人の目でチェックを入れることや体温を計ることで管理してあげることが重要ですね。
そしてうちには放牧地が複数あるんですけど、丘の上に勾配がある放牧地があり、インカンテーションがその放牧地導入の初年度の馬になるんですが、それから毎年のように、その放牧地を駆けた馬が活躍していますね。
ー放牧の効果も成果に直結していますね。他はありますか?
あとはやはり人ですよ。
自身の研究や馬の体調管理もありますが職場の雰囲気と社員の向上心ではないでしょうか。
常に牧場内で大切にしていることは当たり前かもしれないですが、挨拶ですよね。それは社内もですがお客さんが来たときや郵便屋さんに対しても同じく当たり前に挨拶を大切にしております。
それが牧場の良い雰囲気に繋がりますし雰囲気が良ければ仕事の生産性は上がりますからね。またそういった事は馬にも伝わります。
それに加えて、皆が向上心をもって仕事に取り組んでいますね。
出身のメンバーの99.9の木村君等も今後どんどん活躍していきそうですよね。
また、栗東の吉岡調教師は中学校卒業したばかりの時から2年程うちの牧場で働いていたんだけど、牧場にいたときからやる気満々でなんでも吸収しようという意識が高かったですよね。
それは馬の事だけでなく人に対する接し方であったり、環境の整備の事であったり。だから今の活躍は納得だし、何よりも調教師になる為の物凄い努力をしたと思いますよ。
ーこれまでのキャリアで影響を受けたことなどはありますか
2年半イギリスに行っていた時期がありましたね。そこで感じた事は従業員の意識の高さです。馬が駆けると放牧地の芝生がめくれる事があるんですが、牧場の従業員が何気なく捲れた芝生を元の位置に戻して踏み固めていたんですね。そういった事を従業員が当たり前にやっている姿を見て大事なことだなと感じましたね。
ーホースマンとしてのキャリアの中で思い出に残っている一頭は
勿論、全ての馬にエピソードや思い出がありますが、生産馬で思い出に残っているのはチョウカイキャロルかな。親父から牧場を引き継いで、しばらくクラシックとかにも出られなくてね。
周りからは息子に代わって結果出ないとか言われ出した時でしたから、オークス勝った時は喜びも大きかったですよね。繁殖も自分が見つけてきた繁殖でしたから。
ー心に残っているレースなどはありますか
チョウカイキャロルがヒシアマゾンに鼻差で負けたエリザベス女王杯ですかね。
アグネスパレードと直線で三頭並んで、そこから残り200Mを切ってヒシアマゾンとチョウカイキャロルの二頭が抜け出す一騎打ちで興奮するレースでしたよね。
惜しくもハナ差で結果として生産馬が負けたんですけどやれることをやりきったからなのか、心がすっきりしていたんですよ。純粋にヒシアマゾンって凄い馬だなって気持ちでしたね。
コメント